新しい年が明けましたが、会員はじめ多くの自然を愛する皆様にはいかがお過ごしでしょうか?
依然として新型コロナウイルスとの闘いは止むところなく続いていますが、幾つかの行動制限やワクチン接種・マスクの着用・手洗い・消毒の励行により、この危機を乗り超えられると思っていましたが、なかなか敵も然(さ)るもの、そう簡単には降参する気配を見せず、姿を変え、形を変えて私たちに挑んできています。
しかし、人類はこうした挑戦に屈することはありません。これまでに築き上げてきた科学の力でこの見えない敵を制圧する時がもう近いと信じて頑張っていこうではありませんか。
本来、ウイルスは自然環境の中で生きていますが、近年の急速な地球温暖化などによる気候変動がウイルスに新たな生息地を求めさせたのではないだろうか。ウイルスが人類と同じように生命誕生から進化を続けて今日に至っているとしたら、ウイルスにとっても最後の生き残りをかけた闘いであるかもしれません。
地球温暖化は、ウイルスに限らず地上に生息する多くの動植物にも何らかの影響を及ぼしていることを知ることができます。里山に暮らしている私たちにとっても、これまで容易に見ることができたトンボやセミ、クワガタなどの昆虫(陸上及び水中)が少なくなりつつあることに気付きます。気候の急速な変化についていけずに生息地を変えられず姿を消していった動植物は少なくないと思われます。
また、生き残りをかけた動植物にとって大きな問題は農薬の使用です。農作業の効率化を追い求めて、除草剤や殺虫剤の使用は、近年増すばかりです。農薬の人体への害を減らしつつも雑草や害虫はもとより害虫ではない多くの昆虫にも効果てきめんで自然の生態系にも大きな影響を及ぼし、自然環境への危機と言わざるを得ません。
かつては、私たちが身近に楽しんでいた昆虫採集や植物採集、ホタル狩り、窓越しに聞く虫の声も遠くなりつつあります。虫取り等は子どもたちにとって、科学の入口であり、多くの昆虫少年が偉大な科学者へと成長していった事例はたくさんあります。自然は不思議一杯で興味深くいつまでも身近な存在であり続けて欲しいと願ってやみません。
先日、秋篠宮様が「全国学校・園庭ビオトープコンクール」の発表会に出席された折、ご挨拶の中で、世界で約100万種の動植物が絶滅の危機にあることに触れられ、「身近にある自然に対して関心と愛着を持つことが必要」と話されました。ビオトープについても「生態系や生き物の多様性を考える大切な機会を提供してくれる」として、ビオトープの取り組みや自然を大切にすることの必要性を説かれたことは、私たちがめざして行っている事業に大きな励みとなりました。これからも、能登の里山里海に暮らす地域の子どもたちに一層自然に触れ合う機会を提供していきたいと願っています。更なる皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。
2022年1月
一般社団法人 わくわく自然科学館
代表理事 近江 一芳